今回は、『リンダ姐さんの
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〇月△日
よう。
オキュラ地域で廃材屋をしている、リンダ・セラストンだ。
今日から『廃材屋 プチ・フルールの店長日記』を、書くことにしてみた。
まあ、文章を書くのなんて、久々だから、そう、期待はしないでくれ。
これから、お勧め情報を、どんどん上げていくから、楽しみにな。
早速だが、今日のお勧めだ。
『ハラン・ドロンの水晶虫の糞』が、入荷した。
ん?
知らないか。
水晶虫は、水晶を喰ってダイヤモンドを生むんだ。
もちろん、本物のダイヤじゃないが、知らない奴なら、ダイヤと言って売ることが出来るほど素晴らしい屈折率を持つ糞を、水晶虫は出すんだ。
おっと。
食事中なら、すまないな。
でだ。
こいつが昨日入荷してきた。
興味がある奴は、私の店に来てみな。
値段?
交渉次第だよ。
このブログは、不定期更新だ。
いつ新しくなっているか、ワクワクするだろう?
じゃあな。
×月〇日。
よう、リンダだ。
ブログの効果って奴はすごいな。
『ハラン・ドロンの水晶虫の糞』だが、十個あったのが、全部売り切れた。
全く、信じられないぐらいだ。
野郎がニコニコしながら、十人ばかし押しかけてきて、次々に買って行ったんだが、まさか、ダイヤモンドだと、偽って彼女に渡すんじゃないだろうな。
ああ。
もし、急にダイヤモンドだと言って、渡された時は、水晶虫の糞の可能性があるから、気を付けろよ。
見分け方を、一応教えておいてやる。
本物のダイヤモンドなら、水に沈む。
だが、水晶虫の糞は、水に浮くんだ。
簡単だろう?
偽水でも大丈夫だからな、彼氏からのプレゼントが怪しいと思ったら、水に放り込んでみろ。
ダイヤが水に浮いたら、投げ入れた手を拳にして、そのまま、男の頬に突き立ててやれ。
いたいけな女性を騙すなんて、男の風上にも置けないからな。
ああ、拳骨で殴る時は、手首を傷めないように、気を付けるんだぞ。
こう、拳と手首を真っ直ぐにして、力を入れてだな……
おっと。
殴り方を教えている場合じゃなかったな。
そうだ。
お勧めの商品が今日は、入荷したんだ。
正真正銘、紫の森で伐採された木材で作られた、小卓だ。
軽くて丈夫で、瀟洒な彫刻が施されている。
アルデン・ガル工房製で、百年前の品だ。
うちで扱うには上等すぎるからな、さっさと売り払いたい。
気になったら、覗きに来てみてくれ。
じゃあな。
□月☆日
よう、リンダだ。
今日もいい天気だな。
アルデン・ガル工房製の小卓だが、無事に売れた。
お勧め商品ってやつは、ブログに載せてみるもんだな。
いい品だから、ぜひ、大切にしてほしいな。
さて、何でもちまたの店長ブログでは、人気商品ランキング、とかをしているらしいな。ブログを見たって客が、教えてくれた。
うちのは、一点物が多いから、人気商品ランキングってのは、成り立たないが。
そうだな。
比較的、売れ筋の商品って奴がある。
せっかくだから、書いておく。
第三位 収納用品
結構、入荷が多い商品だ。箪笥とか、衣装箱とかだな。少々壊れていても、気にせず使ってもらうといい。
引っ越しや所帯を変える時に、よく売ったり買ったりが起こるようだ。
もし、必要なら、覗きに来てみてくれ。新品よりも、ぐっとお値打ちの品があるぞ。
第二位 金属商品
くず鉄とか、だな。業者がまとめて買いに来ることが多い。
何になるのかは知らないが、一応、金属の種類ごとに分けてある。大雑把だがな。
一番目玉だった、駆動機関部は、この前売れてしまってな。
ちょっと玄関辺りが寂しくなっている。
まあ、活用してくれそうな人に買われていったから、よしとするか。
第一位 木製廃材
こいつが、一番人気だ。
ラグレンは、紫の森の材が有名だが、近隣にも良い木材を出すところがある。
どの木材が、どこの樹かは、あんたの目次第だ。
探せば、お値打ちの品があるからな、頑張って掘り出してみてくれ。
ああ。
この前、えげつなく木材をさらえて、買い叩いて持って帰った奴がいたからね、ちょっと品薄だが、その内また入荷する。
気になったら、一度覗いてみてくれ。
てな感じで、人気度ランキングを出してみた。
意外とオーソドックスで、逆に笑えた。
じゃあな。
△月□日
よう、リンダだ。
大分この店長ブログにも、慣れた様な気がするが、どうかな。
お勧め商品を言いたいのだが、今日入荷した物がね、実は偽物だった。
目が利かないと、ガセを掴まされるから、気を付けてな。
幸い、私は鍛えられているから、何とか凌いだけれどね。
もちろん、商品は偽物として、買い叩いて安くに入荷しておいた。
どれがそれか、店で確かめてみるのも、一興だよ。
おお、そうだ。
偽物と本物。
見分け方があるのか、って聞かれるがね。
そうだね。
物によって、判断する場所は違うが、ざっとした印象で行くとな。
本物は、のびやかだ。
自分自身であることの、誇らしさを持っていて、物に、底力がある。
それに引き換え、偽物は、本物に似せようと意図した、あざとさが見え隠れしている。
どこか、歪で思惑がぷんぷんしているんだよ。
欺こうという悪意のようなものが、そこはかとなく、漂ってくると、言った方がいいかな。
偽物を掴まされる時は、多くは欲に迷った時だ。
こいつは高く売れる、と、欲を出すと、大抵、偽物にひっかかる。
心を鎮めて物に当たると、大抵、物自体が語り掛けてくれるけどね。
ああ、そうだ。
人間にも、本物と偽物があるんだよ、知っていたか。
見分け方?
そんなことは、自分の頭で考えな。
ふふ。
ちなみに、私の旦那は、本物中の本物だったよ。
おっと、のろけちまった。
じゃあ、またな。
(了)
リンダ姐さんの廃材屋ブログは、この後も続くようです!
(えげつなく木材をさらえて、買い叩いて持って帰った奴、って……リュウジくんですか? きっと、リンダさんの褒め言葉なのでしょうね)
そして。
リンダさんの廃材屋の店名が、判明しました。
……
『廃材屋 プチ・フルール』です。