ほしのくさり

第200話  名前を知らない感情






 布団にくるまるハルシャの耳に、人の立てる音が聞こえた。
 ジェイ・ゼルが、帰ってきたのだ。

 約束していた昼を少し過ぎた時間だった。
 彼しかこの部屋に入れない設定にしておくと、言っていた。
 だから。
 この足音は、ジェイ・ゼルだ。
 ハルシャはじっと耳を澄ませた。
 次第に音が近づいてくる。
 そっと扉が開かれた。
 ハルシャは布団に潜り込んで顔を出せないままに、ジェイ・ゼルの動きを感じ取ろうとしていた。
 しばらく戸口でジェイ・ゼルは立ち止まっているようだった。
 人の形に盛り上がる布団を見ているのだろうか。
 眠っているかどうか、様子を伺っているのかもしれない。
 途切れていた足音が再び聞こえた。ジェイ・ゼルがベッドに近づいてくる。
「ハルシャ」
 ジェイ・ゼルの声が聞こえる。
「眠っているのかな?」

 ハルシャは唇を噛み締めて、返事をしなかった。
 今のこの顔を見られるのは、どうしようもなく恥ずかしい。
 だから、寝たふりをしようと布団を頑なにかぶり続ける。
 ふわりと、彼の手が布団越しにハルシャの身に触れた。
 ドキンと心臓が躍る。
 しばらくそのままジェイ・ゼルは、動かなかった。小さく吐息をつくと、静かに手が引かれた。
 彼の温もりが離れていく。
 眠っていると思ったのだろう。ジェイ・ゼルは静かな足取りで、立ち去って行こうとした。
 彼の足音が次第に小さくなる。
 離れていくことに耐えきれずに、
「おかえり……なさい。ジェイ・ゼル」
 と、布団越しにくぐもった声で、ハルシャは呟いた。
 ぴたっと、足音が止まった。
 素早い動きで戻ってくると、ベッドを揺らしてジェイ・ゼルが寝台の横に腰を下ろした。
「起きているのか、ハルシャ」
 布団の上からそっと身を撫でるように、手が滑る。
「お昼を用意してきたよ。目が覚めているなら、一緒に食べようか」

 顔を見られるのが恥ずかしくて、ますます布団の中に潜り込む。
 様子がおかしいことに、すぐにジェイ・ゼルが気づいたようだ。
「どうかしたのか、ハルシャ」
「な、何でもない」
 声から何が起こっているのかを悟られたかもしれない。
 わずかの沈黙の後、身を覆っていた布団が、そっとジェイ・ゼルの手でめくられる。
 とっさに、ハルシャは顔を手で覆って隠そうとした。
 けれど、ジェイ・ゼルに気付かれてしまった。
 一瞬の間があってから、優しい声で彼が問いかけた。
「泣いていたのか、ハルシャ」
 ふるふると首を振る。
 ふっと小さくジェイ・ゼルが笑う。
「どうした」
 髪に手が滑る。
「寂しかったのか」

 身を寄せて、ジェイ・ゼルが髪に唇を触れさせた。
「戻ったよ、ハルシャ」
 腕を外し、ジェイ・ゼルを見る。
 泣いたために、鼻が赤くなっている。
 その様子に目を止めてから、ジェイ・ゼルが目を細めて呟いた。
「心細かったんだね」
 手で促され身を起こすと、ジェイ・ゼルが両腕に包んで抱き締めてくれた。
「もう大丈夫だよ」

 布団の中で、一人で泣いていたことを知られてしまった。
 ジェイ・ゼルの帰りを待ちわびながら、なぜだか涙が滲んでしまったのだ。
 泣くつもりなどなかったのに。
 触れる温もりに心が安らいでくる。
 腕をジェイ・ゼルの胴に廻してぎゅっと抱き締めると、さっきまでの寂しさが消えていくようだ。
 そうなると、無礼な自分の態度が申し訳なくなってくる。ジェイ・ゼルが呼びかけてくれたのに、すぐに反応しなかったことが……。
「さっきは」
 顔を服に押し付けたままハルシャは呟く。
「すぐに、返事をしなくてすまなかった、ジェイ・ゼル」
 よしよしと髪を撫でながら、ジェイ・ゼルが小さく笑う。
「いいんだよ、ハルシャ。拗ねている君も、とてもかわいいからね」

 拗ねている?
 自分は、拗ねていたのか?

「まだ君は心が不安定だったのに、独りにしてしまったね」
 優しく手が髪を滑る。
「許しておくれ、ハルシャ」
 唇が髪に押し当てられた。
「言いつけを守って、大人しくベッドにいたご褒美を持ってきたよ。食事の後に一緒に観ようか」
 ハルシャは涙がまだ乾かない顔を上げて、ジェイ・ゼルを見上げた。
「観る?」
 何を?
 と、問いかける。
 にこっと、ジェイ・ゼルが笑った。
「君が好みそうなものを選んで来たつもりだけれどね」
 灰色の眼を細めて、彼は優しく呟いた。
「映画をいくつか用意してきた。好きなものを選んでおくれ。一緒に観ようか、ハルシャ」


 *


 昼食を済ませた後、ジェイ・ゼルが用意してくれた十本の映画の題に、ハルシャはワクワクと胸を躍らせた。
 昔好きだった『キャプテン・ヴァランタイン』の最新版、『惑星ファルシオンの希望の花』がある。娯楽から離れていた五年の間に、放映されていたようだ。
 思わず手に取りパッケージを眺めていると、
「それにしようか」
 と、ジェイ・ゼルがするりとハルシャの手から、パッケージを抜くようにして取り去った。操作をして、記録媒体を取りだすと座っていたソファーから立ち上がった。
 よく見ると、ここにはモニターのようなものはない。
 どうやって映画を観るのだろう、と考えていると、ジェイ・ゼルはそのまま壁へと歩いていった。
 壁の一部に触れると、手元がぱかりと開いて、記録装置を差し込めるジャックが出て来た。
 ジェイ・ゼルは飛び出したジャックに、『キャプテン・ヴァランタイン』の記憶装置を差し入れる。
 その瞬間、ソファーに向かい合った真っ白な壁が、映画の画面に変わった。

 驚きに、ハルシャは口を開きそうになった。
 壁自体が、放映装置になっているらしい。
 さすがセイラメ。最新設備が整っている。
 大きな壁一面に、映画会社のロゴが映し出された。
 大迫力だ。

 驚くハルシャの横に、笑いながらジェイ・ゼルが戻ってきた。
「壁がスクリーンになるんだよ」
 ソファーを軋らせて、ジェイ・ゼルが腰を下ろす。
 父親に連れて行ってもらった、映画館のことが思い出される。
 中でも、凄腕の宇宙船船長、キャプテン・ヴァランタインが活躍するシリーズが大好きだった。
 ふと。
 ジェイ・ゼルはそのことを知っていたのだろうか、と疑問がよぎった。
 映画は全て、ハルシャが好きな宇宙船に関するものがほとんどだった。

「シリーズ五作目なのだね」
 横でゆっくりと背もたれに身を預けながら、ジェイ・ゼルが呟く。
「三作目まで、映画館で観ていた」
 ハルシャはちょっと、ジェイ・ゼルに身を寄せて彼の呟きに応える。
「大好きなシリーズだ。ありがとう、ジェイ・ゼル」
 口角を上げて、ジェイ・ゼルが微笑む。
「四作目を抜かしてしまって、すまなかったね、ハルシャ」
「だ、大丈夫だ、ジェイ・ゼル。物語自体はそんなに関連性はないはずだから。五作目が見られるだけで、十分だ」
 と、慌ててハルシャはジェイ・ゼルの詫びに報いようと言葉を尽くす。
 微笑むと、ジェイ・ゼルが横に座るハルシャの肩に腕を回して、身に引き寄せた。
「なら、前作を知らない私でも、楽しめるかな?」
 問いかけに顔を上げて彼を見る。
「大丈夫だと思う」
 ハルシャの言葉に、静かにジェイ・ゼルは笑う。
「そうか」
 ジェイ・ゼルが視線を壁に向ける。
「ほら、始まるよ。ハルシャ」
 促されて、画面に見入る。

 映画は、キャプテン・ヴァランタインのところに、突然送られてきた謎のメッセージから始まった。
 助けを求めるものだった。
 差出人の解らないメッセージを無視しようという仲間の言葉を封じて、キャプテン・ヴァランタインは助けに行くことを決意する。
 誰かは解らないが、俺に助けを求めて来たんだ。行かずにはいられないだろう? と笑いながら。
 個性的な仲間たちと乗り出した旅は、思わぬ展開を見せる。
 謎のメッセージの送り主は、宇宙海賊たちに捕らわれる少女だった。その少女にはとんでもない秘密があり、彼女を狙う複数の組織が入り乱れて、混戦状態になる。
 その中で、キャプテン・ヴァランタインは仲間たちと協力して、何とか少女を救い出そうとする――

 前半だけで、ハルシャはドキドキして、ジェイ・ゼルの服を掴みながら画面に見入った。
 物語が佳境になる。

『キャプテン・ヴァランタイン! もう宇宙船が限界です!』
『ミーシャ。限界ってのは、壊れてから言うもんだ。まだ「宇宙船アジャンタ」は行けると言っている。ナビも健在だ。
 突っ込むぞ、亜光速でだ。
 喉の奥に舌を突っ込んどけ、歯で噛まないようにな!』

 キャプテン・ヴァランタインの操る真っ白な宇宙船が、漆黒の宇宙を翔ける。
 憧れに近いものが胸に溢れだした。
 父親と並んで、身を乗り出しながら映画に見入ったことが、鮮やかに蘇る。
 そうだ。
 彼のように宇宙を自在に翔けたかった。それが、自分の夢だった。

 限界の状態の宇宙船で、キャプテン・ヴァランタインは無事に少女を救出した。
 そして、修理をし、騙しだまし少女の故郷にキャプテンたち一行はたどり着く。
 少女の故郷の惑星は荒れた星だった。
 そして、物語の最後に、衝撃的な結末が待っていた。
 少女はずっと『希望』と呼ばれていた。
 その理由が、最後に判明する。
 なんと、少女は故郷の大地と一つになることで、植物たちを活性化させる『種子』の宿命を持つ者だったのだ。
 彼女は命を大地に捧げることで、失われた緑の大地を復活させることが出来るのだ。
 幼い時に犯罪組織に奪われ、惑星再生の材料として売り払われるところを、宇宙海賊にさらわれたらしい。

『なら、この子は――大地を復活させるための道具として、自分の故郷に帰って きたというのか!』
 少女の命を大地に捧げようとする惑星の長老に向けて、珍しくキャプテン・ヴァランタインが怒りを露わに叫んでいた。
『死が待っているというのなら、俺はこの子を故郷になど、戻さなかった!』
『死ではないわ、キャプテン・ヴァランタイン』
 ひどく大人びた声で、黒髪の少女がキャプテンに話しかける。
『私はこの荒廃した星を蘇らせるために、生まれてきたの。これが、私の宿命――恐くないわ』
 小さな少女の手が、キャプテン・ヴァランタインの手を包む。
『どんなことにも恐れずに、進む勇気をキャプテンが教えてくれたから』
 目を上げると、少女は微笑みながら、言葉をかける。
『キャプテン、本当はね、私、故郷に帰るのが嫌だった。どうして自分だけが犠牲にならなくてはならいかって。
 でも、私はこの故郷を蘇らせることが出来る――その力を授かったの。今では誇りに思うわ。ねえ、きっと、百年後の子どもたちは、緑の中で笑うわ。酸素に苦労することもなく――。
 それが、とても嬉しいと思うの。キャプテン・ヴァランタイン』

 そして、覚悟を決めて少女は長老の元へと歩いて行った。
 少女の最後を見届けずに、キャプテン・ヴァランタインと仲間は、ボロボロの宇宙船で、少女の故郷の星を後にした。
 去り行く惑星を見守るキャプテン・ヴァランタインの目に、荒廃した灰色の大地が、みるみる緑に染まっていく様が映った。
 小さく、少女の名を呟いてから、キャプテン・ヴァランタインは目を閉じる。
 きらめく緑に包まれた星から、宇宙船が遠ざかっていく。
 漆黒の宇宙に向けて――

 エンドロールが流れ、優しい声の歌が画面から響いた。
 映画のテーマソングだ。

 涙腺がどうかしてしまったのかもしれない。
 ハルシャはキャストの名前が流れる画面を見つめながら、ぽろぽろと涙をこぼし続けていた。
 映画が終わり、真っ白な壁が戻ってからジェイ・ゼルが立ち上がった。
 記録媒体を壁から抜き、パッケージに戻す。
 まだ涙の止まらないハルシャの頭を撫でてから、彼はキッチンへ行き、二人分の飲み物を持って戻って来た。
 机の上に置くと、
「次は、何を観ようか、ハルシャ」
 と、キャプテン・ヴァランタインの映画以外のものを、並べた。

 次に観たのは、宇宙船で事件が起こる、サスペンスだった。
 三十五人の乗組員を乗せた宇宙船カイリウ号が、突然行方不明になる。三日後に発見された宇宙船の内部は、凄惨な状態だった。
 ほとんどが惨殺されていたのだ。
 映像のショッキングさに、ハルシャは思わずジェイ・ゼルに掻きついて目を逸らしてしまった。
 なんと、三十五人のほぼ全員が殺害されていた。
 その中で――たった一人が生き残っていた。だが、彼は事件当時の記憶を失っていたのだ。
 生き残った一人が、三十四人を惨殺したのか、それとも、未知の生命体が宇宙船を襲ったのか――
 謎が謎を呼ぶ展開だった。
 そもそも、行方不明になった宇宙船が、本当はどこを目指していたのかが、全く解らなかった。
 生き残った一人は、仲間たちが殺された理由を探ろうと、必死に捜査し続ける。けれど、彼自身が大量殺人の容疑を受けている。
 困難な中で、殺害された仲間の妹と協力し、彼はついに一つの真実にたどり着く――

 さっきの映画とは違い、サスペンス要素が高いので、ハルシャの心臓はどきどきしっぱなしだった。
 ジェイ・ゼルの腕を握りしめて、ハラハラする展開に息を飲む。
 映画の演出に、思わず悲鳴を上げてしまうこともあった。
 終わった時は、ぐったりしてしまうほど疲れていた。
 ぎゅうぅっと、ジェイ・ゼルの腕を握りしめ続けていたので、指先が痛いほどだった。
 真っ白になった画面を見ながら、まだハルシャは動けなかった。

「終わったよ、ハルシャ」
 声をかけられて初めて、自分がジェイ・ゼルの腕を捕えて固まっていたことに気付く。
 ジェイ・ゼルが視線を与えてくれながら、微笑む。
「面白かったね。まさか『カイリウ号』にあんな秘密があったとは、ね」
 ジェイ・ゼルも、楽しんでくれたのだろうか。
 見上げるハルシャに、
「たくさん叫んだから、お腹が空いただろう。少し休んだら、食事にしようか」
 と優しく声をかけてくれる。

 はっと気づくと、もう夕方を回って、夜に近い。
 映画を観ていると、時間の経つのがとても速く感じられる。
 握りしめていた腕を、ようやくハルシャは離した。
「す、すまない、ジェイ・ゼル。強く握ってしまって――痕になっていないか?」
 恥ずかしさに顔を赤らめながら、ハルシャは問いかける。
 くしゃっと、髪が撫でられた。
「大丈夫だよ。鍛えているからね」


 夕食は、この前と同じように二人で一緒に作る。
 ジェイ・ゼルは、エプロンを貸してくれた。
 今日は、冷凍保存庫に作り置きしていた、ハンバーグを使うようだ。
 ハルシャはニンジンを使ったサラダと、コーンスープの調理を担当した。
 ニンジンを細く切り、ブイヨン味の出汁で茹で上げる。ビネガーや粒マスタードをベースにしたドレッシングを作り、茹で上げたニンジンとカッテージチーズ、玉ねぎのスライスを合わせて、ドレッシングをかける。
 簡単だが美味しい料理だった。
 サーシャはお酢の味が苦手なのであまり作ったことはないが、両親との食卓に出ていたことを覚えている。
 コーンスープは、スープの素を伸ばすだけで手軽だ。
 ジェイ・ゼルも出来合いのものを使うのだ、と妙に感心する。
 横でハンバーグを焼いていたジェイ・ゼルが、再び香りのいいお酒を振りかけて、炎を上げている。
 二度目なので、心構えが出来ていた。何とか悲鳴を上げずにすむ。
 ジェイ・ゼルは気づいたようだ。
「慣れたのかな、ハルシャ」
 と、口角を上げながら問いかける。
 視線が横に滑る様にして、ハルシャを見た。
「もう驚かないんだね」
「大丈夫だ。火事にはならないのだろう?」
 くすくすとジェイ・ゼルが笑う。
「そうだね。やり過ぎたらお肉が焦げるぐらいだね」

 料理をするジェイ・ゼルを、見つめる。
 これからずっと――こうやって彼の傍らで料理をするのだろうか。
 たった二度一緒に料理をしただけなのに、不思議に長く共に厨房に立っていたような気がする。
 ごく自然で心が安らぐ。そして、楽しかった。
 ふと、サーシャの作文の言葉が脳裏をよぎった。
 そうだ、妹は言っていた。
 料理を作るということは、相手の命を想うことだと――
 ジェイ・ゼルの命を思いながら作るから、こんなにも一緒にする料理が楽しいのだろうか。
 それともただ単に、彼の側で作業が出来るのが嬉しいのだろうか。
 どうも自分は、内側の感情に名前をつけることが苦手のようだ。
 さっきも布団の中で丸くなっていたのを、ジェイ・ゼルは「拗ねる」と言った。
 経験したことのない感情に、翻弄される。
 ちくんと、胸の痛みともに思い出す。ジェイ・ゼルの笑顔に、みなが顔を赤らめることが、どうしてあんなに気になったのだろうか。
 ジェイ・ゼルを見つめる。
 彼に話したら――その感情の名前を、教えてくれるだろうか。

 見つめていることに気付いていたのだろう、ジェイ・ゼルが静かに笑みを深めた。
「こちらは完成したよ」
 首を傾げながらジェイ・ゼルが顔を向ける。
「食事にしようか、ハルシャ」


 五年間、幾度も一緒に食事をしてきたのに、ジェイ・ゼルの自宅で食べる料理が一番美味しいような気がした。
 サーシャは元気だと、食事をしながらジェイ・ゼルは教えてくれる。朝食をメリーウェザ医師に作ってあげたそうだ。彼女は感涙していたらしいと、彼は笑いながら言う。
 それから、メリーウェザ先生のとんでもない味のパウチの話になった。
 思わず二人で笑う。
 話題が次々に移り変わる。
 今日食べたハンバーグは、まとめて作って冷凍しておいたものだそうだ。
 意外とこまめなのだと感心する。

 楽しい食事の後、薬をきちんと飲んでから再びソファーへと向かった。
 また映画を観るのかと思ったら、ハルシャが選ぶ前にジェイ・ゼルは一つのパッケージを手にして、壁を操作している。
 お勧めの映画だろうか。

 ワクワクしながら待つハルシャの目の前に、不意に――

 惑星ガイアの海が広がった。







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