「解りました、ジェイ・ゼル。ご指定の場所へこれから向かいます」
連絡を受けて、リュウジは通話装置に言葉を呟く。
ジェイ・ゼルには昨夜病室を去り際に、吉野の通話装置の番号を知らせていた。そこへハルシャが無事に退院したと、先ほど連絡が入ったのだ。
ホテルで待機していたリュウジに、吉野が受けた通話装置を渡してくる。
ジェイ・ゼル様から
耳元に響くジェイ・ゼルの声には、疲労が滲んでいた。
昨夜は病室でハルシャの寝顔を見つめながら、一睡もしていないのだろうという予感がした。
最後に見た、彼の表情が脳裏をよぎる。
誰かのことを、あれほど深く慈愛に満ちた目で見つめることができるのだと、不思議に感動を覚えるほどの眼差しだった。
その彼が、ハルシャを安全な場所にかくまってから、連絡を寄越した。
ジェイ・ゼルは話し合いのために、これから言う場所に移動して欲しいと伝えてくる。
彼の告げる場所を、リュウジはメモに残す。側に居たマイルズ警部たちが、綴る手元を見つめていた。
ジェイ・ゼルが指示したのは、『グラン・パサドール』という店の駐車場だった。そこで用意した飛行車に乗り換えてほしいと、彼は言う。
どうやら事務所以外の場所で彼は会うことにしたようだ。
了解の意を伝えると、ジェイ・ゼルはこちらの人数を聞いてきた。
「マイルズ警部と僕と
解ったとジェイ・ゼルは穏やかな声で返す。
再会を約して、リュウジは通話を切った。
「ジェイ・ゼルは僕たちを事務所以外の場所へ招くようです」
側で聞いていたマイルズ警部と彼の部下に言葉をかける。
「これからすぐ出ると、伝えておきました」
「了解だよ。思ったより早かったな」
リュウジの言葉に、上着を手に取りながらマイルズ警部が立ち上がった。
「シレルとマックスは、セアラ・ウィンスントンに話を聞きに行ってくれ。ナロウとアンディは引き続きレズリー・ケイマンとヴィルダイン・ハーベルの関係性を調べておいてくれないか。
クディンサは、セジェン・メルハトルの過去について、もう少し当たってくれ。特に奴が兄や家族とどうして別れて暮らしていたのか、そこのところを、な」
解りました警部、と明確な声があちこちで応える。
「頼んだ。俺はこれから相談に行ってくる」
ちょっと笑って、警部は付け加えた。
「大きな花火が打ちあがるかもしれん。今からマスコミ用の表情の練習をしておけよ」
笑う部下たちに手を振って、マイルズ警部がリュウジへ顔を向ける。
「行こうか、坊」
警部は笑いを消して呟いた。奇妙な緊張感が身体から漂っている。
「はい、よろしくお願いします」
リュウジは言って、アンディとナロウの部屋を後にした。
朝食後、ここに全員で集合し簡単な打ち合わせをしていたのだ。
今日までの調べたことがらと、リュウジの計画を話し、ざっくりと情報を共有する。
警察組織のことを調べ続けてくれていたマックス・グランドが、
「ラグレン警察の捜査自体に、かなり不透明なところがあります」
と、やや口重く言う。
メモを見ながら彼は話しを続けた。
「ここだけの話といって教えてくれたのは、犯罪が起こっても事件をろくに捜査もせずに、住所不定の人物を適当に被疑者としてでっち上げ、事件を解決したことにしてしまうことが日常的に行われている、ということです。事件解決には、そちらの方が早くて確実だと。
確かにラグレン警察の検挙率は飛びぬけて高いです。その裏には、こんなカラクリがあったようです。
心ある刑事たちは、自ら警察を辞めたという話です。
ヴィンドース夫妻の事件を主で調べていたカーリン・ジェイコブ元主任刑事も、ラグレン警察の遣り方に納得が行かず辞職しています。
その人物に当たれば、ラグレン警察の不正を証言してもらえるかもしれません」
そしてその悪癖が始まったのは、ヴィルダイン・ハーベルが警察署長になってからが顕著だとも、付け加える。
「ハーベルが警察署長になったのは、七年前。レズリー・ケイマンが執政官になってからだそうです。執政官には特別任命権があって、都市を護る警察署長を名指しで任命できるそうです」
「きな臭いな」
マックスの説明に、マイルズ警部は静かに呟く。
「二人の接点はどこだ。シレル、マックス。二人の関係性をさらに探ってくれ」
マイルズ警部とその優秀な部下たちは、堅実に秘された事実を暴き出していた。
出がけにアンディとナロウに調べるように指示していたセアラ・ウィンストンは、レズリー・ケイマンの元妻だった。
レズリーは誘拐事件の後、二か月後に妻を離縁している。
事件後の精神的な不安が理由で、夫婦として暮らしていくことが苦痛だと語ったそうだが、警部の考えは違った。
夫婦となれば、どんなに誤魔化しても、中身がすり替わっていることに気付かれる可能性が高い。彼女は戻って来たレズリーに、何らかの違和感を覚えたかもしれない、と。
リスクを低く抑えるために、セアラを離縁したのではないか、と警部は考えた。
当時の話をレズリー・ケイマンの元妻に聞くように、警部は部下たちに指示を出したのだ。
帝星の汎銀河帝国警察機構の本部とも、警部は綿密に連絡を取り合ってくれていたようだ。
事件性を鑑みて、三日前の段階で二十人の捜査員の応援要請をしたと、静かな声で警部は語る。明日中には着き、特別捜査チームがラグレンで結成されるようだ。
そろそろ帝星に戻るというのは、事件を帝星の本部へ持ち込むという意味だったようだ。政治がらみの事件は根が深い。
ラグレンの膿を出し切るためにも、公平な帝星の裁判にかける必要があるようだった。
じわじわと、毒蛇の首にかけた綱を、引き締めていくような手ごたえがある。
身動きできなくしてから、確実に捕らえなくてはならない。
リュウジはラグレンの空を滑って行きながら考えていた。
ジェイ・ゼルが指示した店の駐車場には、見慣れた彼の黒い飛行車がすでに待っていた。
到着したリュウジたちを認めると、中からジェイ・ゼルの部下のマシュー・フェルズが姿を現わした。
「こちらです」
彼の声に招かれて、飛行車の中に警部たちと座を占めた。
自分たち三人を中に収めてから、マシューは扉を閉じる。
中に乗り込んだマシュー・フェルズは前の座席から振り向いて、手にしていた黒いものを自分たちに差し出した。
目隠しだった。
「申し訳ありませんが、これからお連れする場所に着くまで、これで視界を遮っておいて頂けませんか。
ご不便をおかけします」
これから行くのは、ジェイ・ゼルにとって極秘の場所らしい。場所が特定されるのを嫌って目隠しを要求しているのだろうと、理解する。
マイルズ警部と目線で話し合い、彼らの提案を素直に受けることにした。
「もちろんです」
リュウジは言葉を放って、率先してマシューの手から目隠しを三枚とも受け取り、左右の警部と吉野に渡す。
「ご指示に従います」
笑顔で言い、リュウジは自分の目を、渡された目隠しで覆った。
闇の中でしばらくしてから、ふわりと車体が浮くのが感じられた。
体感時間十数分ほどで、飛行車が速度を緩めたのが解った。
すうっと飛行車がほとんど揺れもなく降り立った。
「着きました。目隠しを外して頂いて結構ですよ」
マシューの声を合図に、リュウジは目隠しを取った。
帰りにも必要になるのだろう。外したものを座席に三人分まとめておいてから、マシューの指示に従って、飛行車を出る。
降り立ったのは、四方が壁で囲まれた駐車場だった。
周りの風景が見えない。これなら場所がどこかは解らない。
「こちらです」
案内するようにマシューが歩き出した。
三人で、壁に囲まれた駐車場を動いていくと、壁の隅にチューブがあった。
乗り込んだ後、マシューは階下に降りるボタンを押した。
どうやら、ジェイ・ゼルが待つ場所は地下のようだ。
「こちらです」
窓一つない廊下を歩いて、突き当りの扉の前に案内された。
マシューはカードキーを滑らせて、扉を開く。
部屋は、防音でシンプルな構造をしていた。むしろ殺風景なぐらいだ。
居間のように机と向かい合う位置にソファーが置かれている。
高級な品だと当たりをつけるが、それ以外の生活感をもつ家具は一つも見当たらない。
話し合いだけのために用意された場所のようだった。
入り口から入って右のソファーに、すでにジェイ・ゼルが腰を下ろしていた。
三人の到着に気付くと、すっと立ち上がり、自分たちを出迎える。
「ご足労をおかけしたね」
「いえ、こちらこそ。場所をご提供くださってありがとうございます」
ジェイ・ゼルに、リュウジは礼で報いた。
にこっと彼は笑うと、手でソファーを示す。
「どうぞ。座ってくれないか」
三人並んでも、余裕で座れる広さのあるソファーだった。
前にゆったりと一人でジェイ・ゼルが腰を下ろし、折り畳み式の椅子を手に、マシューが彼の後ろに座を占めた。
最初に口を開いたのは、リュウジだった。
「今日はお時間を取って頂いて、ありがとうございます。
この話し合いの前に、お伝えしなくてはならないことがあります」
考えて来たことだった。
ここまで協力を求めたのなら、腹を割って話しをしたかった。
「僕の本名は、オオタキ・リュウジではありません」
いきなりの切り出しに、一番マイルズ警部が驚いていた。
「カラサワ・リュウジと申します。オオタキは母方の姓です。僕の祖父は、カラサワ・ソウイチロウと申します。現・カラサワ・コンツェルン総帥です。
僕は、次期総帥と言われています」
ジェイ・ゼルの表情は動かなかった。
彼は自分の正体をすでに見切っていた。だが、正式に名乗りを上げようと思ったのだ。それが、彼に対する礼儀のように思えた。
「今まで、本当のことをお伝えせずに、申し訳ありませんでした。
彼らを話し合いに同席させていただけることに、感謝いたします」
ジェイ・ゼルは口上を聞き終えると静かに微笑んだ。
「わざわざ名乗りを上げてくれて、ありがとう。リュウジ。だが、カラサワ・リュウジでもオオタキ・リュウジでも、ラグレンの旅行者名簿に見当たらなかったのは、なぜかな?」
柔らかな問いかけに、既に二つの名で自分の正体を探ろうと、ジェイ・ゼルが検索をかけていたことに気付く。
一瞬、誤魔化そうかと思ったが、信頼が大切だと思い返す。
正直なことを、リュウジは伝えた。
「ラグレンに入ったのは、マサキ・ウィルソンという名でです。その名で検索してみてください。どこかに引っかかるはずです」
ジェイ・ゼルの笑みが深まった。
「なるほど。さすがだね、偽名がいくつかあるのだね、リュウジ」
さらりと彼が呟く。
わずかの間会話が途切れた。
次に誰が何を言うのか、探るような間がある。
「――サーシャは」
不意に、ジェイ・ゼルが口を開いた。
「昨日は、落ち着いていたかな」
意外な問いかけに一瞬目を瞬かせてから、リュウジはスラスラと答えた。
「はい。ドルディスタ・メリーウェザのところで、元気に過ごしたようです。今朝の食事はサーシャが作ったようで、ドルディスタは涙を流して美味しいと喜んでいたと、彼女から聞いています」
ちょっと笑って、リュウジは付け加える。
「いつも妙な味のパウチが、ドルディスタ・メリーウェザの朝食なので」
くすくすと、ジェイ・ゼルが口元に拳を当てて、笑いを漏らした。
「ハルシャから聞いているよ。『ファングーラの泡立つ海風味』は、彼女のセレクトだそうだね。なかなか強烈な味だ」
ハルシャのことを口にした途端、ジェイ・ゼルの雰囲気が和らいだ。
「ハルシャにお伝えください」
ジェイ・ゼルの質問の意図を見抜いて、リュウジは言葉を続ける。
「サーシャは元気にしているので、ご心配なく、と。僕が責任を持ってお預かりいたします」
ジェイ・ゼルはゆっくりと、視線をリュウジに向けた。
「ありがとう。伝えておくよ」
視線が、絡み合う。
「ジェイ・ゼル」
腹をくくって、リュウジは彼に向けて語り掛けた。
「全てお話しします。どうして僕がここに居るのか。ダルシャ・ヴィンドース氏と僕との関わりも、この前お話しした、セジェン・メルハトルの情報がどこから出たのか。
解りづらいところがあったら、ご遠慮なく質問してください。
僕はあなたに、今回の事件の全容を理解してほしいのです」
それから――
リュウジは約一時間に渡って、ダルシャ・ヴィンドースの出会いから自分がラグレンに降り立った経緯、そしてハルシャのところで過ごしたことを、言葉を選びながら語り続ける。
ただ一つ。
記憶を失う原因は身体的な暴力だった、と言うことだけが事実と異なるだけだった。
それ以外は、包み隠さずに全てを話した。
途中でマイルズ警部に交代し、警部が部下たちと一緒に調べ上げたことも、伝える。
リンダ・セラストンの話に、ジェイ・ゼルは興味を持ったようだった。
やはり彼女と面識があるようだ。
なるほど、尋常ではない肝の据わり方だと思ったら、そういう過去があったのか、と、ジェイ・ゼルが小さく呟く。
スクナ人がラグレンの浄化装置を支えているというのは、ジェイ・ゼルも初耳だったようだ。
深く考え込む顔で話に耳を傾けている。
「レズリー・ケイマンが連れ去られ、発見された場所は今、廃屋になっているんだが、その床下に遺体らしき影が認められた。
ラグレンには微生物の働きが低いから、土に埋めても遺体は腐らない。恐らくそのせいで、十三標準年が経っても人型の形状が確認できるのだと思う」
レズリー・ケイマンがすり替わっていると思うもう一つの原因を、マイルズ警部はさらに語る。
「誘拐されてから二か月後に、レズリー・ケイマンは、妻のセアラを離縁している。学生時代からの付き合いで、取り分けて不仲だった訳ではないそうなんだがね。他の者なら煙に巻けても、妻の目は誤魔化しにくいと考えた可能性がある。
部下二人が彼女に聞き取りに行っている。何か話を掴んで帰ってくるかもしれない」
警部はさらに、今回のことは事件性が極めて高いので、帝星に応援要請をしたと、洗いざらいをジェイ・ゼルに告げた。
「二十人の派遣を願い出ている。どこまで融通を利かせてくれか解らないが……すっ飛ばして来てくれるそうだ。
明日の朝までにはラグレンに着く予定をしている。
一応、団体観光客のふりをして来てもらうようには、お願いしているけどね」
政府と警察が相手だと、妙な動きをすれば気付かれてしまう。
警部は用意周到だった。
「なるほど」
ジェイ・ゼルは全てを聞き終えて静かに呟いた。
「君たちはヴィンドース夫妻殺害の実行犯として、レズリー・ケイマンを逮捕したいと考えているのだね」
彼の口調にリュウジは微かな緊張が走るのが、抑えられなかった。
「あなたが『ダイモン』の組織の方だとは、承知の上です。レズリー・ケイマンとコネクションがあることも」
リュウジははっきりと言い切った。
「僕たちがしようとしていることは、あなたにご迷惑をおかけするかもしれません。それでも、僕たちは自分たちの手の内を、全てさらしました。
それは、あなたと腹を割って話をしたかったからです」
ぐっと両手を握りしめて膝に押し当てながら、リュウジは言葉を続けた。
「僕が、ヴィンドース夫妻の事件を調べたいと思ったのは、ハルシャとサーシャのためです。両親の死の真相をうやむやにされ、不当な人生を強いられている彼らを、何とかしたいという一念が、僕を動かしました。
それだけでなく、ハルシャはヴィンドース家の家長というだけで、ラグレン政府に命を狙われています。
何故ここまで彼らが苦しめられなければならないのか、僕はどうしても納得が行かないのです。
ハルシャたちを守りたい。
それは――あなたも同じだと、僕は考えました。だから、計画を聞いて欲しかったのです。
協力を願い出ている訳ではありません。
邪魔をするなとも、言うつもりはありません。
あなたには、為さなくてはならない『ダイモン』としての仕事があります。
僕たちがしようとしていることは、あなたが積み重ねて来た利害関係を根底から覆すことになるかもしれません。
あなたの立場を悪くすることは、解っています」
イズル・ザヒルが、ジェイ・ゼルの行動を裏切りと取れば、彼の命が危ないとまで、マイルズ警部は告げていた。
危ない橋を渡らせているのかもしれない。
けれど、彼にどうしても知っておいてほしかった。
同じ人を大切に想う者同士として、共通の目的の元に動きたいと思ったのだ。
恐らく自分は、ジェイ・ゼルを信頼しているのだろう。
「僕はどうしても、ダルシャ・ヴィンドース氏を死に至らしめた者の罪を暴きたいのです。
十年前、ダルシャ・ヴィンドース氏は息子が二十歳になった時に、宇宙船を贈ることをとても楽しみにしていました。
彼が愛し、育んでいた息子は、二十歳になりました。
なのに……父親の願いは届かず、息子は夢を断たれ、過酷な労働を強いられていたのです」
ダルシャ・ヴィンドース氏の大らかな笑みが脳裏に浮かんで、リュウジは思わず唇を噛み締めた。
「彼らの幸せを奪った全ての原因を、衆目の元に曝すこと――それが、僕の」
悔しさが込み上げてくる。
「五年前に、ダルシャ・ヴィンドース氏の死に気付けなかった、うかつで愚かな僕に出来る、たった一つの償いなのです」
リュウジの言葉を、黙ってジェイ・ゼルは聞いていた。
吉野が心配そうな視線を送ってくる。
解っている。
いちいち関わって来た人々のことを気にしていたら、総帥職は務まらない。
けれど。
悔しいのだ。
もし五年前にダルシャ・ヴィンドース氏の死に自分が気付けていたら、ここまでの苦しみを、ハルシャが味わうことはなかったはずだ。
布団を二枚敷いたら一杯の部屋で、慎ましやかに暮らしていたハルシャとサーシャの姿が脳裏をよぎる。
決して不満を口にせずに、二人で支え合いながら懸命に運命に耐え続けていた。
ハルシャは、十五で勉学の道を断たれた。
悪意の中で五年間働き続け、黙々と借金を返し続けた。
ハルシャの人生を、誰かの勝手な思惑で歪められたことに、激しい怒りが湧き上がってくる。
「二十歳の息子の誕生日を楽しみにしていた父親が、不当に命を奪われる。
このままレズリー・ケイマンを放置すれば、同じ悲劇が繰り返されます。
僕はもう、ハルシャたちと同じような苦しみを味わう人が、ラグレンに現れてほしくないのです」
珊瑚色の夕焼けを、ハルシャと一緒に眺めたことを、思い出す。
この色が好きなのだと、彼は呟いていた。
彼が愛する故郷を、これ以上レズリー・ケイマンの勝手にさせる訳にはいかなかった。
ジェイ・ゼルはゆっくりと瞬きをした。
「具体的には、どうやってレズリー・ケイマンを崩すつもりだ、リュウジ」