サーシャの事件に関連して、汎銀河帝国警察機構の協力を仰ぐことになった。
ジェイ・ゼルが、戻った事務所でマシュー・フェルズたちにそう告げた時、彼らは一瞬、息を呑んだ。
立ったまま、自分の机に腰を預け、ジェイ・ゼルは彼らの顔を見守る。
自分が何としてでもサーシャ・ヴィンドースを助けようという意図を察し、部下たちは黙って従ってくれていた。
だが。
そんな彼らでも、汎銀河帝国警察機構の捜査員たちが、自分たちと行動を共にするという上司の決断に、動揺を隠せないようだった。
「ディー・マイルズという、汎銀河帝国警察機構の警部は、人質救出に慣れているようだった。専門の訓練も積んでいる」
緩く腕を組みながら、ジェイ・ゼルは口角を少し上げて、見つめる五人の男たちへ柔らかい言葉を放つ。
自分の意志は、翻らない。
だが、彼らの理解を得て、快く協力して欲しかった。
「サーシャの命を最優先にしたい」
微笑みながら、言葉を続ける。
「ギランジュとシヴォルトは、相当の覚悟で今回の事件を起こしただろう。素人の私たちが、不用意に彼らを追い詰めたら、サーシャを殺害しかねない。
その事態だけは、避けたいんだよ」
静かに、付け加える。
「君たちを信頼していないわけじゃない。より、安全な措置を講じたいだけだ」
そのために、自分たちが支払うリスクは、もちろん誰もが解っていた。
「彼らの協力が必要だと、ジェイ・ゼル様がお考えなら」
不意に、マシュー・フェルズが口を開いた。
「私どもは、従います」
皆の意見を封じるような口調だった。
にこっと、ジェイ・ゼルは笑う。
「ありがとう、マシュー」
わずかにためらってから、彼は再び口を開いた。
「ギランジュたちの処置も、彼らにお任せするのですか、ジェイ・ゼル様」
口元に笑みを浮かべたまま、ジェイ・ゼルは目を細めた。
「マイルズ警部らに要請するのは、サーシャの救助だけだ」
ジェイ・ゼルは、穏やかな口調で、部下たちの表情に注意を払いながら、言葉を続ける。
「ギランジュとシヴォルトの身柄は、こちらで預かる」
細めた目から笑みを消しながら、低く、ジェイ・ゼルは呟く。
「彼らの始末は、私たちの流儀でつけさせて頂こう。それは、譲れない」
ジェイ・ゼルは、視線をマシューの顔に向ける。
「必要があれば、帝星からのお客さんに、相応の礼をしてくれるかな。マシュー」
警察としてではなく、個人として協力をしてほしいのだと、謝礼を見れば彼らは気付くだろう。
受け取るかどうかは、解らないが。
「後で、私に請求を回してくれるといい」
謝礼はハルシャの借金に加算することなく、自分が支払うと、ジェイ・ゼルは会計係のマシュー・フェルズに伝える。
その一言で、マシューは理解したらしい。
「すぐに、ご用意いたします」
どのくらいかは、裁量に任せておけば大丈夫だろう。
マシューの明確な言葉にうなずきを与えてから、ジェイ・ゼルは、机に預けていた腰を浮かして真っ直ぐに立った。
「少し、奥の部屋で仕事をしている。帝星のディー・マイルズ警部が来たら、教えてくれるかな」
「わかりました、ジェイ・ゼル様」
事務室にいた、マシューが皆を代表するように言う。
腕を解くと、ジェイ・ゼルは再び微笑んだ。
「よろしく頼むよ」
身を伸ばし、ジェイ・ゼルはゆったりとした歩容で、事務室の右奥にある、自分の私室への扉の前に立った。
扉にある指紋認証用のパッドに触れると、すっと右へと扉がスライドして、開いていく。
奥は、ジェイ・ゼルが個人的な資料を置いている部屋だった。
後ろで扉が閉じたことを確認してから、その部屋に留まることなく、ジェイ・ゼルはさらに、奥に進む。
ジェイ・ゼルの私室には、机と本棚が設えられている。個人的な客をもてなすための、応接セットも机の前にある。
ソファーをよけて、本棚に進む。
本棚の前に立つと、青い表紙の一冊を、迷いのない動きでジェイ・ゼルは抜いた。
その瞬間、ゆっくりと、本棚が左に動いていく。
ジェイ・ゼルの私室の本棚のさらに奥には、隠し部屋があった。
隠し部屋は本当に極秘の物だけが置かれている。
またこの部屋は、遙か宇宙に浮かぶイズル・ザヒルの本拠地、スペースコロニー『アイギッド』と直接つながる惑星間通話装置が完備されている場所でもあった。
ジェイ・ゼルは通話装置のヘッドセットを、覆うようにして耳に装着してから、イズル・ザヒルとの
短いコール音が、耳元から響く。
『ジェイ・ゼルか』
音声だけが、響く。
「お忙しい中、申し訳ありません。
『何か、トラブルか』
よほどのことが無いと、ジェイ・ゼルが自分との専用回線を繋がないと、イズル・ザヒルは知っている。
「はい。お耳に入れておきたいことが」
『少し待ってくれ。今から、通話装置の前に移動する』
イズル・ザヒルは、回線をつないだまま、歩いているようだ。周りの人間に断りを言いながら移動している。
もしかしたら、『アイギッド』での遊戯に、立ち会っている最中だったのかもしれない。
仕事を中断されることを、イズル・ザヒルは嫌う。
だが。
緊急事態だった。
数分後に、ジェイ・ゼルの前の大きな画面に、ふわっと色が溢れ、イズル・ザヒルが座りながら
『どうした』
と問いかけてきた。
一呼吸入れてから、ジェイ・ゼルは口を開いた。
「お仕事中にお邪魔して申し訳ありません」
椅子に腰を下ろしたイズル・ザヒルが、薄い色の瞳を細めて笑う。
『前置きはいい。話しに入ってくれ。私も忙しい』
それでも、耳を傾ける姿勢は崩さずに、イズル・ザヒルが問いかける。
瞬き一つだけの時間を貰ってから、ジェイ・ゼルは話しを始める。
「ギランジュ・ロアが、私の配下のシヴォルトと結託し、ハルシャの妹、サーシャ・ヴィンドースを拉致しました」
イズル・ザヒルは、片眉を上げた。
『ほう』
イズル・ザヒルは椅子に座ったまま、脚を組んだ。
『サーシャ・ヴィンドースは少女だったね。さて。ギランジュ・ロアは男しか興味がなかったと思ったが――宗旨替えでもしたのかな?』
「いえ。彼はサーシャと、ハルシャ・ヴィンドースの身柄の交換を求めてきました。
ギランジュ・ロアの真の目的は、ハルシャです」
くっと、イズル・ザヒルが喉の奥で笑いをはじけさせた。
『なるほど。私が断ったからそういう手に出たのか。言っておいただろう、ジェイ・ゼル。彼は生かしておくと厄介だと』
「ご忠告をないがしろにし、申し訳ありません」
詫びながら、ジェイ・ゼルは言葉を続ける。
「ギランジュは、宇宙に今いると、我々に思わそうとしました。ですが、どうやら地上にいるようです。わざわざ画面の見える通信装置で連絡を寄越し、十時間後に再び連絡をすると言ってきました」
ふむ、と、イズル・ザヒルは顎を撫でながら呟いた。
『困るな。ハルシャ・ヴィンドースは、極めて優良な借金の返済者だ。私の物に手を出していると、ギランジュはきちんと解っているのだろうね』
「はい」
ジェイ・ゼルは、静かな声で言った。
「彼は、はっきりと、理解しています」
イズル・ザヒルの眼が静かに細められた。
『なら、やることは、一つだな。速やかに処分すればいい』
ジェイ・ゼルは、息を吸った。
ここからが、一番難しい所だった。
「
言葉を選びながら、ジェイ・ゼルは続ける。
「ハルシャとサーシャの兄妹は、互いだけを支えに、五年間暮らしてきました。今回のことで、ギランジュとシヴォルトに制裁を加えるのは簡単ですが、それだと、万が一にも、サーシャが犠牲になる可能性があります。
そうなった時、ハルシャ・ヴィンドースは生きる目的を失います。
自分を責め、自ら命を絶つ危険性が、極めて高いと思われます」
ジェイ・ゼルの言葉に、イズル・ザヒルは耳を傾けてくれている。
そのことを確認しながら、ジェイ・ゼルは言葉を続けた。
「サーシャとハルシャと、二人の優良な返済者を失えば、借金の回収は不可能になります。
今回は、サーシャの生命の確保を、最優先にしたいと思います」
イズル・ザヒルは、静かに微笑んだ。
『ハルシャが、むざむざ自死せぬように、君が気を配り説得をすれば……物事はもっと簡単にいくのではないかな?』
イズル・ザヒルの考えはそうだった。
現在、ハルシャ一人で、借金が回収できている。なら、ギランジュたちを速やかに始末すればいい。
その過程で、サーシャが犠牲となったとしても、身から出た錆だ。もっと用心深く、さらわれないようにサーシャは心がけるべきだった。彼女は浅慮のつけを、自らが支払わなくてはならない。
そうやって、犠牲を厭わずにイズル・ザヒルはのし上がってきた。
彼がたった一つ、失うことを躊躇するのは、ただ――
ジェイ・ゼルの妹、エメラーダだけだった。
「
ジェイ・ゼルは、視線を落として言葉を続けた。
「それでも……妹を喪失した後、ハルシャ・ヴィンドースが」
伏せた睫毛が、震える。
「傷つき、もぬけの殻のようになり、心を失ってしまうことが、私は、辛いのです」
一瞬、言葉を切ってから、ジェイ・ゼルはゆっくりと、目を上げた。
「今回の一連の出来事は、全て、私の思慮が足らなかったためです。
イズル・ザヒルは、腕を組んで、ジェイ・ゼルを見つめていた。
薄青い瞳が、冷静に今の自分の状況を見ている。
「自分で始末を付けさせて下さい。
静かに、イズル・ザヒルが瞬きを一つ、した。
『君は』
不意に、優しい笑みが、彼の口元にあふれた。
『ハルシャ・ヴィンドースが絡むと、平静を保てないようだね』
ジェイ・ゼルは、肯定を含んだまま、沈黙する。
その表情を見守ってから、最終決断をする口調で、イズル・ザヒルが口を開いた。
『いいだろう。君の思うように為す許可を与えよう。結果とすれば、サーシャが居た方が、借金の回収は楽になる。生かしておいた方が、得だというのは私にも解るよ。サーシャを救いたいのならそうするといい』
ほっと、ジェイ・ゼルは肩から力を抜く。
「ありがとうございます、
『ただし』
微笑みが深まる。
『ギランジュ・ロアは、こちらに引き取らせてもらおうか』
にこっと笑う。
『出来れば生きたまま捕縛してもらえれば、ありがたいな。ギランジュは、ハルシャとサーシャの兄妹が、私の負債者だと解りながら手を出した。
非常に、不愉快だ』
イズル・ザヒルの眼が、細く針金のようになる。
『しかるべき戒めを――彼に味わって頂こう。今後、不遜にも私の所有物に手を出す者が無いように』
どのような戒めをギランジュが受けるのか、ジェイ・ゼルは予測していた。
恐らく。
スペースコロニー『アイギッド』の遊戯に供される。
自分は、その意味を込めて、彼に警告をしたつもりだった。だが、彼はイズル・ザヒルの恐ろしさを正確に理解出来なかったようだ。
「了解いたしました、
再び優しい笑みが、イズル・ザヒルの顔に浮かぶ。
『ライサムを、すぐにそちらに送るよ。彼にギランジュ・ロアを渡してくれ。それ以上のことは、君は何も気にしなくていい――』
ライサム・ゾーンは、イズル・ザヒルの片腕ともいうべき男だった。
様々な意味合いを込めて、彼を送りつけてくるのだろう。
サーシャの事件がどう落ち着くのか、見届ける必要をイズル・ザヒルは感じているのかもしれない。
「お手間をとらせ、申し訳ありません。
心からの詫びを、ジェイ・ゼルは呟いた。
ふふっと、イズル・ザヒルが笑いをこぼす。
『しかし、ギランジュも惑わしてしまうほどに、どうやらハルシャ・ヴィンドースは魅惑的なようだね。
君が手塩にかけて開発し慈しんできた少年だから、当然と言えば、当然かな』
目を再び伏せたジェイ・ゼルの耳に、静かな声が響く。
『だが、気を付けるんだよ。ジェイ・ゼル』
忠告を帯びた声に、ゆっくりと、視線を上げる。
『過ぎた寵愛は、よほど思慮を巡らせないと、周りの人間を巻き込み、要らぬ騒乱を引き起こす。
愛でるのは良い。だが、大切ならば、注意深く護ることだ。
彼を、失いたくないのならな』
言葉が、ジェイ・ゼルの中に刺さった。
視線が落ちる。
イズル・ザヒルは、エメラーダを誰が見ても解るほどに、溺愛していた。
その反面、エメラーダに余計な手を出す者に対して、一厘の容赦もしなかった。
エメラーダの私室に入った者は、殺す。
彼女に不快な思いをさせた者もまた、問答無用で彼は命を奪った。
それが、イズル・ザヒルの護り方だったのだ。
「お言葉が身に沁みます。浅慮をどうかお許しください」
再び詫びるジェイ・ゼルに。軽い口調でイズル・ザヒルが応える。
『いいよ。君が初めて、本気になった子のことだ』
弾かれたように、思わずジェイ・ゼルは顔を上げた。
ふふっと、イズル・ザヒルが微笑む。
『私としても、全面的に協力させてもらうよ。借金が回収出来ている限り、私には何の不満もない』
笑みが深まる。
『君が誰を溺愛しようが、何も気にしない――安心しなさい。ジェイ・ゼル』
薄青い瞳が、自分を見つめている。
普段は決して見せない、イズル・ザヒルの情愛に近い感情が、瞳の中に見え隠れしている。
そのままで、終わるつもりか。
先代の
君の頭脳は優秀だ。
働きたいのなら、その方法を教えてあげよう。
のし上がるのも、自由だ。
ただし。
私を、裏切るな。
イズル・ザヒルは、自分を、一人の人間として扱ってくれた。
だから、今、自分はここにいる。
惑星トルディアで事業を任され、今の暮らしをすることが出来ているのは、彼の尽力のお陰だった。
あの時、もしイズル・ザヒルがエメラーダの兄として、相応の扱いをしてくれなければ、今でも空の見えない部屋の中に自分はいただろう。
そして。
魂の大切さに、気付くこともなかった。
「ありがとうございます。
感謝の言葉に、珍しく、小さくイズル・ザヒルが首を振った。
『君が居なければ、醜悪なナダルの元で、エメラーダは……恐らく命を絶っていた』
ぽつんと、声が聞こえる。
『兄として、君が彼女を守ってくれたことに、感謝しているのだよ、私は』
初めて聞く、イズル・ザヒルの心の声だった。
『ギランジュの始末は、私がする。君の手を汚すことはない』
思わぬ優しい声で言ってから、ちらりと時間を確かめ、イズル・ザヒルはジェイ・ゼルに向き合った。
『また、何かあったら、遠慮なく連絡をしてくれ。ライサムをすぐにそちらに送る。彼に相談してもらっても良い』
それでは、と、短い挨拶を呟いてから、イズル・ザヒルは通話を切った。
腹心を送りつけてくるのは、彼なりに自分を心配してのことなのかもしれない。
ひどく冷酷なイズル・ザヒルが、時折自分に見せる温かな心配り。
最初に出会った時、これほど自分たち兄妹にとって、イズル・ザヒルが大きな存在になるとは、思っても見なかった。
彼の細めた目が、エメラーダを見つめていたのを、ジェイ・ゼルは覚えていた。
ナダル・ダハットに痛めつけられるたびに、エメラーダはイズル・ザヒルの手によって大切に身を拭われていた。
眼差しを交わしながら、言葉にならない言葉で、二人は語り合っていた。
エメラーダを自分の物にするには、先代を殺すしかない。
そう強く想うほどに、イズル・ザヒルはエメラーダを愛していた。
恐らく。
最初に出会った、あの瞬間から。
二人は見えない力で、惹かれ合っていた。
どんな困難も乗り越えて、互いを深く結びつけるほどに。
ジェイ・ゼルは、ヘッドセットを外した。
灰色に変わった画面を見つめる。
この部屋には、ハルシャとサーシャの借金に関する資料もある。
決して外には出せない、もの。
ことんと、音をさせて、ジェイ・ゼルはヘッドセットを、通話装置の横に置いた。
立ち上がり、部屋を出ながら、扉を閉めるボタンに触れる。
この部屋の存在は、誰も知らない。
たとえ、汎銀河帝国警察機構の捜査員が来たとしても、目に触れてはいけない資料など、表には置いていない。何一つ。
警部が来る前に隠しておいた方が、得策ではありませんか。
ジェイ・ゼルの耳に、オオタキ・リュウジの声が響いた。
彼は、自分たちが非合法な手段で利益を得ていると、知悉している。
そんな目で自分を見ていた。
ハルシャは……リュウジを、友人だと言った。
だが。
リュウジはそうは思っていない。
挑むような、深い藍色の瞳を、ジェイ・ゼルは思い返す。
あれは、ハルシャを一人の人間として、愛している者の眼だ。
深く、強く、彼はハルシャを想っている。
それを、ハルシャ自身に気取らせまいと、必死だ。
僕は、ハルシャとサーシャが幸せなら、それでいいのです、ジェイ・ゼル。
自分を見上げていた、強く激しい眼差しが、視界をよぎる。
ふっと、ジェイ・ゼルは片頬を歪めて笑った。
「どうして――」
小さく、呟く。
ジェイ・ゼルの背後で棚が動き、元に復す。その向こうに部屋があるなど、誰にも解らない。
静寂を取り戻した部屋の中で、ジェイ・ゼルは静かに、呟きを続けた。
「私が、ハルシャの幸せを願わないと、思うんだ――オオタキ・リュウジ」
世界で一番、幸せにしたい。
誰よりも、自分よりも。
なのに、その彼を、不幸にしか突き落とせない。
まるで呪詛をされたようなこの身のことを。
真っ直ぐな目で、リュウジは責める。
もう傷つけるなと。
傷つけたくなどなかった。
誰よりも大切に、慈しみたかった。
彼の幸せだけを、祈っている。
なのに、いつも酷く傷つけてしまう。まるで――
暗黒の砦に潜む、呪われた悪魔のように。
ジェイ・ゼルは、思いに、独りで静かに笑みを浮かべると、不意に何かに耐えられなくなったように、両手で顔を覆った。
そのまま本棚にもたれて、彼は沈黙する。
マシュー・フェルズが、私室の扉を外から叩き、ディー・マイルズ警部の来着を告げるまで、ジェイ・ゼルはただ、黙し続けていた。